Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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Macでお仕事?
しばらくサーバーがダウンしていましたが、何度問い合わせをしても、担当者からの返事はなし。


7回目に、やっと返信があった。

しかし、アバウトな復旧日時は知らされたが、その後もほったらかしという「塩対応」。


という事情がありましたので、下記のアドレスで「見切り発車」をすることにしました。


Macでお仕事?



気が向いたときに、力を抜いてご訪問ください。



2016/06/28 PM 04:59:50 | Comment(1) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

ペット以下の・・・
テクニカルイラストの達人・アホのイナバが、意味不明なことをつぶやいた。

イナバ君は、2年前にツイッターを始めたのだが、今までアホはアホなりに普通につぶやいていた。
しかし、今回のは少し変だった。

「芝生で心が痛い」

イナバ君は痛がりなので、あそこが痛い、ここが痛いという「痛いアピール」をよくするのだが、「心が痛い」と言ったことはなかった。

どこかの公園の芝生に座ったとき、自分のアホさ加減にやっと気づいて、心を痛めたのだろうか。
アホが自分のアホに気づいたら、絶望的になるのではないだろうか、と私は気遣った。

心配した私は、イナバ君ではなく奥様に聞いてみることにした。
イナバ君は、説明能力が4歳児並みなので、常識人の私は彼の言うことが理解できない。

奥様に聞いたほうが手っ取り早いと思って、奥様にメールを送ることにした。
「ご主人のツイッターに関してお聞きしたいことがあるので、手の空いたときにお電話をいただきたいと思います」

メールにしたのは、私が人様に突然電話をするという勇気を持っていないからだ。
いま何をしているかもわからない相手に、自分の都合で電話をするのは気が引ける。

そんな理由で、私はお得意様からの電話にも出ないことが多い。
仕事中は、「忙しいときに電話してくるんじゃねえよ」と毒づいて、出ないことがほとんどだ。

長年の経験で、すべての電話は一分一秒を争うほどの緊急性を持っていないことがわかっていた。
30分後の折り返し電話で間に合うことが百パーセントだ。

だから自分も、人の貴重な時間を断ち切りたくないので、無駄な電話をすることを避けている。
メールなら、人の時間をそれほど邪魔することがないので、メールを活用している。

私がメールをした12分後に、イナバ君の奥様から電話が来た。

時候の挨拶のあと、「芝生で心が痛い」のツイッターの件を話すと、「あら、なんですか、それ?」とのんきな声で言われた。
「芝生ですかぁ? どこの芝生でしょうねぇ。芝生につまづいたりでもしたんでしょうか」と半笑いの声が受話器を通して聞こえてきた。

あまり、心配していないようである。

「いま不在なんですけど、いる場所はわかりますので、本人に確かめてみます。すみません、バカな夫がご心配をおかけして」と半笑い状態のまま会話が終わった。

バカな夫・・・・・俺もそう思う。


2年前の夏、イナバ君と東京新宿の世界堂に画材を買いに行ったときのことである。
イナバ君は、フォトショップとペインターで極めて精細な絵を描くが、手書きでも同じように精緻な表現をすることができる。

どのような画材を使っているのか興味があったので、付いていった。
筆やペン、ブラシを数種類、ポスターカラー、アクリル絵の具を20色以上買った。

レジで支払いをしようとしたとき、財布の中に金が入っていないことに、イナバ君が気づいた。
「あれ? 5万円を持ってきたはずなのになあ」

車の中に忘れたとか?
「でも、財布は持っていますからねえ」
「今日は外では一回も財布を開けていないはずだから、落とすわけないしなあ」
「カードは持っているけど、奥さんからカードは使うなって言われてるんですよね」

じゃあ、俺が貸そうか、と言ったとき、イナバ君が「あっ、思い出しました! ズボンの尻のポケットに入れたんでした」と手を打ったあとで尻のポケットを探った。

「あれれ? ないなあ。入れたのは間違いないんだけどなあ」

このままレジの前で、「ひとりボケ」を演じ続けられたら店にも迷惑がかかると思って、イナバ君をフロアの隅っこまで連れて行った。

よく探したほうがいいよ。
ケツのポケットは、間違いないんだな?

「それは、ハッキリと覚えています。絶対入れました。あっ!

最後の「あっ!」は、かなりでかい声だったので、数人の客に振り向かれた。
しかし、イナバ君はアホなので、その程度のことは気にも留めずに、突然ズボンを脱ぎだしたのである。

え?
ここで、ストリップを始めようというのか。
ギャラリーが数多くいる店の中で?

犯罪ではないのか?

止めようとしたが、イナバ君がズボンを脱ぐほうが早かった。
イナバ君は、高速でズボンを脱いでしまったのだ。

慌ててイナバ君の股間を隠そうとしたとき、その下に、もう一つのズボンが見えた。
それは、短パンだった。

聞いてみると、短パンで出かけようとしたら、奥様から「スラックスにしなさい」と命令されたという。
そこで、イナバ君は、短パンはそのままに、その上からズボンをはいた。

「ああ、だから、ウェストがきつかったのかあ。太ったせいかと思ってました」

5万円は、短パンの左のケツポケットに入っていた。

しかしまたイナバ君が「あれ? 今度はiPhoneが・・・・・」と言い出しやがった。

それはきっと、ズボンのケツにあるんじゃないか。

「確かに、ありましたあ!」

そしてまた、アホのイナバは、短パンの上からズボンを履いて、レジに向かった。
5万円を誇らしげに握りしめながら。

アホといると、退屈することがない。


「芝生で心が痛い」の問題は、簡単に解決した。

iPhoneの文字変換をよく確かめなかったせいだ。
iPhoneは、一文字打っただけで「予測変換」をしてくれる。
それは、大変便利な機能だと思う。

ただ、それは普通の人間にとっては便利な機能だが、究極のアホには「できすぎた機能」になることがある。

「しばらく」を確かめもせずに、予測変換で「芝生で」に変換。
「ここに」を「心が」に変換。
そして、「いたい」を「痛い」に変換。

普通の人なら投稿前に読み返すのだろうが、アホには、その作業が欠落していた。

多摩市のスーパー銭湯に行ったら、気持ちよすぎて帰るのが億劫になった。
そこで、「しばらくここにいたい」とつぶやいたつもりだった。

その結果の「芝生で心が痛い」。


報告してくれたイナバ君の奥様に、本当に楽しい男ですよね。人を退屈させないですからね、と言ったら、「でも、これで稼いでこなかったらペット以下ですけど。ああ、でも・・・今も我が家での序列は、ペット以下です。ハハハ」と正しい表現をして笑った。


あれほどのスキルを持っていながら、ペット以下の扱いをされるなら、スキルのない私は何だろう、と思った。



皆様には、答えは、おわかりだと思いますが。
(ペットのウ〇チ以下?)



ところで、ゴールデンウィークに熊本にボランティアに行ったイナバ夫妻は、寄付はもちろんだが、大量の熊本名産品を購入したようだ。

どれぐらいの額だったかは、聞いていない。
そういう下品なことを聞く教育を私は祖母や母から受けていない。

ただ、イナバ君の奥様から後日「熊本みやげリスト」というメールが来て、そこには「ご迷惑でなければ、どれか貰っていただけませんか」と書いてあった。

メニューリストを見ると34種類のみやげと個数が、記されていた。

私は、欲張りではないので、その中から「柚子こしょう」と「からし蓮根」、「デコポン・ゼリー」をリクエストした。
ひと箱ずつをリクエストしたつもりが、5パックずつ送られてきた。



「からし蓮根」を食いながら、熊本を身近に感じている今日この頃でございます。



2016/06/04 AM 06:26:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

逃げました
情けない思いが続いていた。

ゴールデンウィークに、大学時代の友人ノナカ、オオクボ、カネコが熊本にボランティアに行った。
友人ニシムラの兄の家を含む倒壊家屋の整理をするためだ。

他に、(私が用意した、ささやかなものも含めて)物資も届けたという。

私はと言えば、ゴールデンウィーク明けに、2つ仕事の締切を抱えていることを理由に、誘われたが行かなかった。

ノナカたちも仕事を抱えていたと思うが、彼らは行った。
しかし、私は行かなかった。

口先だけの卑怯な男、と責められても反論できない。

それを長年の友人の尾崎に話すと、「俺が代わりに行く」と言ってくれた。

しかし、それでは意味がない。

だから、やめてくれ、と言ったが、尾崎は「俺が俺の意思で行くのだから、意味もなにも関係ない。おまえはおまえの仕事をしろ」と言って、一人で熊本に向かった。

あとで聞いたところによると、テクニカルイラストの達人・アホのイナバも奥様とふたりでボランティアに行ったという。


つまり、俺だけが逃げたのだ。



申し訳なさすぎて、いまも少し落ち込んでいる。




(本当は、貧血と不整脈で熊本まで行く自信がなかった・・・・・マスゾエ氏並みの醜い言い訳)




2016/05/24 AM 06:22:09 | Comment(1) | TrackBack(0) | [日記]

マッサオ
息も絶え絶えに、3階までの階段を上った。

4月26日午後1時47分、杉並の建設会社のドアを体をぶつけるようにして開けた。
その私の姿を見た事務の男性が、「どうしたんですか? Mさん、顔が真っ青じゃないですか」と言った。

シュレックじゃねえよ!

「・・・あのぉ・・・・・すみません、Mさん。シュレックは青ではなくて緑なんですけど」

あ・・・・・・たしかに。
私としたことが・・・・・。

武蔵野のおんぼろアパートから自転車で、杉並高井戸の建設会社に行く途中で、持病の不整脈の発作が出た。
しかし、約束の時間に到着しなければ、どんな嵐が吹き荒れるかわからないので、脈が不規則に飛ぶのも構わずにペダルを漕ぎ続けたら、極度の酸欠状態に陥ってしまったのだ。

申し訳ありませんが、わたくしにギミ・ゥワラ。

「ワラですか。ワラは最近使いませんねえ」

いえ、ゥワラですって。
ルック! マイ・リップ!
リッスン・トゥ・ザ・プラナンシエイション。

「ああ、くちびる、真っ青じゃないですか!」

シュレックじゃねえよ!

「いや、ですから、シュレックは緑なんで」
(チープなコントですな)

あのぉ・・・とにかく、水をくだされ。
申し訳ないですが、2杯ほど、お願いいたします。

「ああ、ウォーターのことですね。水道水でいいんですか」

トーキョーノ水ハオイシイデスカラ。

2杯立て続けに飲んで、少し落ち着いた。
あー、生き返った!

「でも、まだクチビル真っ青ですけどね」


草刈マッサオじゃねえよ!


微妙な沈黙。

いま事務所にいるのは、20代の男の事務員2人と40代の女性事務員1人だけだ。

彼らは、草刈マッサオ氏を知らない世代なのかもしれない。

やっちまったな・・・と思ったとき、激しい汗っかきの男性事務員が、「ああ、それって、真田幸村のお父さんのことですか」と言った。

いや、それは時代が違いますね。
真田幸村は戦国時代の人。
草刈マッサオさんは、現代の人ですから。
現代の人が戦国時代のお父さんなんて、ありえないですよ。

「Mさん、それ、冗談ですか、本気ですか?
Mさんのいうことは、どこまでが本当でどこまでが冗談かわからないからなあ」

それは、私を知る方の96パーセントから頻繁に言われるコトバ。

あなたが冗談に聞こえたら、それは冗談。
本当に聞こえたら、それは本当。

私はいつもそう答えているのだが、相手は馬鹿にされたと思うらしく、私がそう言うと必ず不機嫌になる。

このときも40代の女性事務員から「言っていること、全然わかりません」と拒絶された。

しかし、真田幸村の父親が草刈マッサオ氏と言われる方が「俺にはサッパリ」なんですけど・・・。
どう考えたって、時代が違うじゃないですか。
タイムマシーンがあったとしても、それは説明がつかないんじゃないですか。

「いや、ドラマの話ですから。NHKのドラマですよ。Mさん、知らないんですか? サナダマル?」

サナダムシ? ムサシマル? アケボノ? アサショーリュー?

「相撲じゃなくてドラマですから」

日本放送協会は、私の銀行口座から「受信料」なるものを定期的に闇の世界から抜き取っているので嫌いです。
民放の地上波は無料なのに。
だから、関心を持たないようにしているんです。

しかし、草刈マッサオ氏が、真田幸村の父上役をなさっていることは初めて聞きました。
そうですか、あのイケメンモデルだった草刈氏が、お父上役をなさるとは、時代も変わりましたな。

「え? クサカリマサオは、モデルだったんですか?」

ご存知なかったのですか?
(あ、また、脈が2拍飛んだ。おやぁ、今度は7拍の連打)

「まだ顔が青いですね。
大丈夫ですか?」


宮崎あおいじゃねえよ!


またしても微妙な沈黙。
なぜ「真っ青」と言わなかった?

やけくそでトーンを変えて、また、草刈マッサオじゃねえよ! と叫んだとき、顔デカ社長が帰ってきた。
約束の時間より、8分の遅刻である。

遅刻するなら、あらかじめ言って欲しいですね。
酸欠になるほどペダルを懸命に漕いだ私がバカみたいではないですか。

「なんだぁ! 俺がクサカリマサオだって?」
と言ったあとで、「遅れて悪かったが、着替える時間を3分くれねえか」と右手で敬礼をしながら、更衣室に消えた。

そのあと、4人でヒソヒソ話。

「Mさんのおかげで、2年くらい前から社長の眉間のシワが浅くなったんで、助かってますよ」
「ホントですよ」

毎回思っていたんですが、こちらの社長、俳優の高橋英樹さんを遠心分離機にかけて、両目を離れさせ、鼻を広げたような顔をしてますよね。

「ああ、そう言われれば!」
「凄い! 例えがジャストミートですよ!」

というような会話をしたあとに、社員たちは一斉に持ち場に戻った。
体に危機意識が染み付いているせいか、社長の気配は肌でわかるようなのだ。
彼らが持ち場に戻った2秒後に、顔デカ社長が更衣室から出てきた。

そして、ドッスンドスドスという音を立てながら、応接セットのソファに腰を下ろした。

「あんた、顔色が悪いな。
ああ、だから、『草刈マッサオじゃねえよ!』って叫んでたのか」

驚いた。
ビックリした。
サプライズだった。

「顔色が真っ青」を「草刈マッサオ」にかけたことをわかったことも意外だし、社長の声の調子が、ハリセンボンの近藤春菜さんに似ていたからだ。
しかも、オバさんっぽい笑顔まで作るというクオリティの高さを見せたのだ。

社員一同、唖然として社長の顔を見守った。
しかし、何ごともなかったかのように、顔デカ社長は、気持ち悪いほど優しい表情をして言ったのである。
「あんた、具合が悪いのなら、打ち合わせは伸ばそうか。
1週間くらい遅れても、俺の方は構わないぜ。
うちの若いのに、家まで送らせるからよお」

いえ、5分間ほどお時間をいただいて、休んでいれば復活します。
申し訳ありませんが、私に5分の猶予をいただければ、と切にお願いいたします。

「おお、30分くらい休んだほうが、いいんじゃないか。
5分ぽっちじゃ、あんたの年じゃ回復せんよ。
横になったらどうだい? 毛布もあるぜ」

「あ! それともショック療法ってのはどうだい?
午前中に業者が俺の機嫌を取るために、『森伊蔵』を置いていったんだよ。
そいつを飲んでみるってのもありじゃねえか。
あんたには、休息よりも酒の方が効くかもしれねえからな」

森伊蔵は、顔デカ社長の大好物の焼酎である。
「幻の」とまで言われている焼酎だ。
聞くところによると5万円以上するレアなものもあるという。

生意気にも、顔デカ社長は、森伊蔵しか飲まないらしい。
そして、私は昔その森伊蔵さんを社長からいただいたことがあった。
しかも、そんな高価なものだと知らずに、二日間で飲みきってしまったのである。

知っていたら、百年かけて飲んだものを。

では、恐れ多くも森伊蔵さんをトゥー・フィンガーで、お願いできたらと。

「おお、わかった」と言って出された森伊蔵さんは、トゥー・フィンガーを遥かに超える量だった。
しかし、ありがたく頂戴した。

逆効果になって、ぶっ倒れるかもしれないが、森伊蔵さんと心中できるのなら本望だ。

味は、正直なところわからない。
ワインやウィスキーの違いだってわからないのだから、飲みなれない焼酎の良さがわかるわけがない。

ただ、飲む前は、1月の青森駅に降り立ったときのように冷えていた体が、飲んで2分2秒後には、初夏の飛騨高山「さんまち」を歩いているような程よい温もりを感じるようになった。

それは、見た目にもわかったらしく、顔デカ社長が「少し血色が戻ったな」と、嬉しそうに自分の両膝を叩いた。

森伊蔵さんのおかげで、無事に打ち合わせを終えることができました。
(ただ、このようなことは真似をなさらない方がいいと思います・・・誰もしないでしょうが)


帰りは、会社の軽トラックの荷台に自転車を積んで、武蔵野のおんぼろアパートまで送っていただいた。

自転車を荷台から下ろしているときに、顔デカ社長に言われた。
「あんた、一人で仕事しているから仕方ないのかもしれねえが、もう少し仕事を選んだほうがいいんじゃねえか。
どさくさに紛れるようで気が引けるんだが、俺んところの専属になれば、そんなに無理する必要はないからよ。
もう一度、真面目に考えてくんねえかな」

そして、私の両肩を叩いたあとでニヤリと笑って、「タカハシヒデキじゃねえよ!」と言った。

我々のヒソヒソ話が聞こえていたようだ。


いましばらく、それなりの間、相当な長い時間をいただければ、もう一度考えてみたいと思います。


「言ってること、よくわからねえが、まあ、頼んだぜ」

顔デカ社長は、軽トラックに颯爽と乗り込み、「タカハシヒデキじゃねえよ!」と叫びながら、去っていった。
意外と気に入っているようだ。


おや?
私の右手が、見たことのない紙袋を掴んでいて、その中には何故か森伊蔵さんがいらっしゃった。

きっと、不整脈の発作が起きたらまた飲みなさい、と神様が持たせてくれたに違いない。



おそらく、遠心分離機にかけた神様だと思うが。



2016/04/30 AM 06:25:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

陽はまた昇る
熊本出身の知り合いは、大学時代の同級生・ニシムラだけだった。

ニシムラはいま神奈川小田原に在住しているので、被災は免れた。
ただ、ニシムラの兄が住んでいる熊本市のご実家は、倒壊の危険があるという。

大学のときからニシムラと親しかったオオクボは、「俺ができる最大限のことは何だろうかといま考えているところだ」と、思いつめたような目でカネコと私の顔を交互に見た。
オオクボは東京南新宿で、コンサルタント会社を経営していた。

オオクボが生意気にも私を呼び出したので、出向いてやった。


黙祷をしておこうか。

3人で立ち上がった。

1分ではなく、3分にしよう。
「なぜ?」

3分で俺たちの祈りが熊本に届くわけがないが、1分よりは近づける。

3人で祈った。

「東日本大震災を思い出したな」と言ったのは、芋洗坂係長そっくりのカネコだった。
カネコは、当時、千葉市に支部のある会社の支部長をしていた。

そこで、液状化現象を目の当たりにしたというのだ。
「体がすくむって、ああいうことを言うんだな。頭では何が起きているかわかっているのに、体が動かないんだよ。液状化も知識としては知っているんだが、目の前で見ると恐怖しか感じなかった」

「俺の会社が入っているこのビルは免震構造になっているから、極端に大きな揺れというのはなかったが、揺れている時間が長くて社員も右往左往していたな」とオオクボが固い表情で言った。

そして、「マツは?」と聞かれたので、俺は生きていることに感謝した、と答えた。

私の答えに、少し座が白けたのを感じたのか、カネコが不自然なほど明るい声で、「オオクボ先輩、本当に助かりましたよ。俺を拾ってくれて」とオオクボに媚びを売った。

カネコは、30年以上勤めていた会社を今年の2月で辞め、4月から大学時代の友人ノナカが経営するミニパソコン塾の塾長になった。
その他に、オオクボの会社の相談役にも就くという世渡りの上手さを見せた。

誰にでも媚びを売れるデブは得だ。
売れる媚びを独立と同時に捨てたガイコツは、一人で生き抜くしかない。

「普通は相談役ってのは名誉職みたいなものだが、カネコには俺の相棒として働いてもらうつもりだ」とオオクボ。

そういえば、もうひとりの「相棒」は元気か?

「サトウのことか? おかげさまで、存分に働いてもらっているよ。俺の会社は、サトウでもっているようなもんだ」

サトウさんは、オオクボより10歳以上年下の社員だ。
6年ほど前だったと思うが、サトウさんが突然理由も言わずに「会社を辞めたい」と言い出して、オオクボは慌てた。

サトウさんの事務処理能力の高さを買っていたオオクボは、慌てふためき、何を勘違いしたか、一番役に立たない私に愚痴をこぼした。

「あいつは俺の片腕なんだよ。あいつがいないと俺の会社は機能しない。片腕なんてもんじゃない。両腕を失うようなもんだ。どうしたらいい?」

四角い顔から血の気をなくしたオオクボに、私はいつものように、いい加減な答えを返した。

おまえ、そんなに大事に思っているのに、なんでサトウさんは「片腕」なんだ。
おまえは、サトウさんを「片腕」としか思っていないのか?
俺がサトウさんなら、それは嫌だな。

「しかし、年下だぜ。部下だぜ。それ以外なにがある? なにができる?」

俺だったら、年下だろうが部下だろうが、自分にとって大事な人なら「相棒」として接するけどな。
「片腕」なんて失礼な言い方は絶対にしない。

日本語としての「片腕」の意味は、信頼できる腹心だから、おまえは正確な日本語を使っているつもりだろうが、俺からすると対等じゃないんだよ。
俺には「片腕」が「手下」にしか聞こえないな。

「第三者が勝手なことを言うんじゃねえよ!」
オオクボは四角い顔を真っ赤にして怒ったが、サトウさんは、その後辞表を撤回したという。

オオクボが、どんなマジックを使ったかは知らない。
私は、オオクボの会社には興味がないからだ。

成功者に媚びを売る卑屈な芋洗坂係長と高級なスーツを着た偉そうな成功者が前に座っている。
テーブルをひっくり返して帰りたくなった。

だが、そのとき「銀のさら」の店員が、極上ちらし2つと助六1つを運んできた。
オオクボが昼メシを奢ってくれるというので、助六さんをお願いしたのだ。

私は高級なものを食うと腹を下す可愛い体質をしているので、助六さんしか選択肢がなかった。
昼メシはワンコイン以下と決めているから、私にとって「648円」の助六さんはご馳走である。
極上ちらしには興味がないので、値段は知らない。

「美味しいですよ、オオクボ先輩!
寿司は、日本人のソウルフードですね。
元気が出ます!」

芋洗坂の媚びは、とどまることを知らない。
太鼓を持たせたら、さぞ似合うに違いない。

そんな風に、助六さんを食いながら、太鼓持ちの太鼓腹を冷ややかに見ていたら、ケツのiPhoneが震えた。
ディスプレイを見たら、吉祥寺の馴染みの居酒屋で店長代理をしていた片エクボさんからだった。
片エクボさんは、結婚出産のために昨年末で居酒屋をやめていた。

出た。

「白髪の旦那、産まれたよ!
今朝だよ!
男の子だよ!」

それは、めでたい。
ご苦労様でした。

旦那様は、喜んでくれたかい?

「それがね、札幌に出張中で、明日帰ってくるんだよね。
だから、赤ちゃんとの対面はまだ」

予定より2週間早く産まれたというのだ。
旦那様も立ち会えなくて悔しかっただろうと思われる。

「それでね・・・言いにくいんだけど、白髪の旦那に来て欲しいんだけどな」

まさか、旦那様の代わり?
いいのだろうか?
旦那、あとで知って怒らないかな?

「大丈夫。説明すればわかるやつだから」

ようするに、旦那の代わりに褒めてほしいっていうことだよね。

「親と友だちには褒めてもらったんだけど、それだけじゃ足りないんだよね。
だから、褒めて、褒めて!」

わかった、札幌ドームいっぱいの褒め言葉を用意して行くよ。

「札幌ドームじゃなくて、東京ドームの方がいいんだけど」

俺は、東京ドームが大嫌いなんだ!

「ハハ、相変わらず大人気ないね。
じゃ、待ってるから」


会話を聞いていたオオクボが、ゲスな仕草で小指を立てて聞いた。
「これか?」

いや、こっちだ。
親指を立てた。

「おまえ、いつから、そっちの趣味に変わったんだ?」

何をおっしゃっているの?
大学時代からよン。

オオクボが、健康のために毎日飲んでいる「ヘルシア緑茶」を吹き出した。
しかし、リアクションが素人だった。
私だったら、芋洗坂の顔の真ん中に吹き出していただろう。

そんなんじゃダメだ。
もう一度やり直せ。
カネコめがけて吹くんだ。

ホラっ!

「おまえは、そうやって、いつも俺を・・・・・」

「オオクボ先輩。
こいつは、ただ非常識でバカなだけです。
惑わされてはいけません。
これが、こいつの手なんです!
まともに受け取ったらダメです!
我慢してください」


2歳下の生意気なカネコが、珍しく正しいことを言ったので、私はカネコに向かって立ち上がって拍手をした。
スタンディングオベーションだ。

それを見たカネコは、オオクボの肩に手を置いて「オオクボ先輩、これって、俺を完全にバカにしてるんですよね」と半泣きの顔で訴えた。

「あのなあ、カネコ。
まともに受け取るなって言ったのは、おまえだろうが。
惑わされるな!」

正しいことを言ったオオクボに対しても私はスタンディングオベーションを送った。

すると、同じようにオオクボも立ち上がって、私に向けて拍手をした。
太鼓持ちのカネコもオオクボにならって、私に向けて拍手をした。

つまり、二人で生意気にも「スタンディングオベーションがえし」をしてきたのである。


飽きた私は、自分のバッグを開けて、中から特大サイズのオニギリを取り出して食うことにした。
まさかケチなオオクボが奢ってくれるとは思わずに、どこかの公園のベンチで食う予定で特大オニギリを持ってきたのだ。

具は、豚カルビの甘辛煮だ。
海苔好きな私は、二重に海苔を巻いて真っ黒い砲丸のようなフォルムのオニギリにした。

銀のさらの助六さんも美味かったが、砲丸オニギリはもっと美味かった。

一口食って、その砲丸オニギリをオオクボたちに投げるフリをしたら、二人とも本気でよけやがった。

こんな風に、バカを相手にするひとときが、私に至福の時間を与えてくれるのでございます(私が一番バカですけどね)。



ご実家が被災した友人ニシムラ。

(ここにいないノナカも含めて)俺たち4人で出来ることは限られるかもしれないけれど、立ち上がるお手伝いはしたいと思っている。

俺たちは、肥の国・熊本の人たちが持つ大きな力が、ガレキの下から復興の陽を燃え上がらせることを信じている。


陽はまた昇る。


微力ながら、いま一度、陽がキラキラと昇るお手伝いができたら、と思っている。


2016/04/23 AM 06:22:01 | Comment(1) | TrackBack(0) | [日記]



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